予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会 第16回

議題

(1)麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、A型肝炎、23価肺炎球菌、インフ ルエンザのワクチンの安全性について
(2)報告事項・「疼痛及び運動障害を中心とする多様な症状」についての疫学調査について

開催日 2015-11-27
委員名簿

第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
平成27年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
(合同開催)
委員・参考人一覧
日時:平成 27 年 11 月 27 日(金)18:00~20:00
場所:厚生労働省専用第 22 会議室(18 階)

【副反応検討部会】
<委員>
稲松孝思   東京都健康長寿医療センター顧問
岡部信彦   川崎市健康安全研究所長
倉根一郎   国立感染症研究所所長
多屋馨子   国立感染症研究所感染症疫学センター第三室長
永井利三郎  プール学院大学短期大学部教授
長谷川秀樹  国立感染症研究所感染病理部長
道永麻里   公益社団法人日本医師会常任理事
○桃井眞里子  国際医療福祉大学副学長・国際医療福祉大学病院病院長
山縣然太朗  山梨大学大学院総合研究部医学域基礎医学系社会医学講座教授

<参考人>
祖父江友孝  大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座環境医学教授
○:部会長

【安全対策調査会】
<委員>
○五十嵐隆   独立行政法人国立成育医療研究センター理事長
遠藤一司   一般財団法人日本病院薬剤師会専務理事
大野泰雄   公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団理事長
柿崎 暁   群馬大学大学院病態制御内科学講師
望月眞弓   慶応義塾大学薬学部教授
○:調査会長

<参考人>
神田 隆   山口大学大学院医学系研究科神経内科教授
(敬称略、五十音順)

議事録(テキスト)

2015年11月27日 第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成27年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録
健康局健康課

○日時
平成27年11月27日(金)18:00~20:00

○場所
厚生労働省専用第22会議室

○議事
○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただいまより「第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」及び「平成27年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」の合同会議を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただき、ありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。副反応検討部会の長谷川委員、安全対策調査会の遠藤委員、望月委員より御欠席の連絡を受けております。また、副反応検討部会の岡部委員より、遅れる旨の御連絡をいただいております。

 現在、副反応検討部会委員9名のうち7名、安全対策調査会委員5名のうち3名の委員に御出席をいただいておりますので、厚生科学審議会並びに薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○事務局 本日の審議の前に、傍聴に関しまして留意事項を申し上げます。

 開催案内の「傍聴への留意事項」を必ず守っていただきますよう、お願いいたします。

 留意事項に反した場合は退場していただきます。

 また、今回、座長及び事務局職員の指示に従わなかった方や会議中に退場となった方については、次回以降の当会議の傍聴は認められませんので御留意願います。

 本日の座長につきましては、五十嵐安全対策調査会長にお願いしたいと思います。

 それでは、ここからの進行をよろしくお願いいたします。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。事務局から審議参加に関する遵守事項につきまして、御報告をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局から審議参加について御報告いたします。

 本日御出席された委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金などの受け取り状況について、これまでと同様に申告いただきました。

 本日の議題について調査審議される品目は、MR、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、A型肝炎、23価肺炎球菌、インフルエンザの各ワクチンであり、その製造販売業者は、一般財団法人阪大微生物病研究会、北里第一三共ワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社、一般財団法人化学及血清療法研究所、デンカ生研株式会社、MSD株式会社であり、事前に各委員に申告をいただいております。各委員からの申告内容については机上に配付しておりますので、御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の寄附金等の受け取り状況から、柿崎委員が、武田薬品株式会社及びMSD株式会社から50万円を超えて500万円以下の受け取りがあるため、柿崎委員は、MR、麻しん、風しん、おたふくかぜ、23価肺炎球菌ワクチンについて、意見を述べることはできますが、議決に参加いただけませんことを御報告いたします。

 また、前回9月17日の合同会議にて御報告しました関連企業からの寄附金・契約金などの受け取り状況につきまして、訂正がございましたので御報告いたします。

 副反応検討部会の稲松委員から、平成26年2月26日、平成26年5月19日、平成26年10月29日、平成26年12月19日、平成27年1月20日、平成27年3月12日の際に、一般財団法人化学及血清療法研究所からの寄附金・契約金等の受け取りなしという申告をいただいておりましたが、正しくは原稿執筆料として50万円以下の受け取りがあった旨の訂正の申告がありました。

 同部会の岡部委員から、平成25年6月14日、平成25年9月12日、平成26年2月26日、平成26年5月19日、平成26年12月19日、平成27年1月20日、平成27年3月12日の際に、北里第一三共ワクチン株式会社より50万円以下の受け取りがあった旨の申告がありましたが、正しくは受け取りなしである旨の訂正の申告がありました。

 同部会の多屋委員から、平成26年10月29日、平成26年12月19日、平成27年1月20日、平成27年3月12日の際に、一般財団法人化学及血清療法研究所より平成25年度、平成26年度同額として50万円以下の受け取りがあった旨の申告がありましたが、正しくは、平成25年度が最高額として50万円以下の受け取りである旨の訂正の申告がありました。

 これらのいずれについても、審議参加規程に照らして、これまでの議決に影響はないことを確認いたしましたので、あわせて御報告いたします。

 引き続き委員におかれましては、講演料等の受け取りについて通帳や源泉徴収票などの書類を確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願いいたします。

 以上でございます。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。

 では、事務局から本日お配りいただきました配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局より本日の配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元の資料の一番上に座席表がございまして、その次に議事次第、委員一覧、資料一覧がございます。それから、本資料、参考資料、当日配付資料がございます。

 本資料は資料一覧のとおり、資料1~9の各ワクチンの副反応報告状況に関する資料と、資料10及び資料11は、疫学調査に関する資料となっております。

 そのほか参考資料としまして、各ワクチンの添付文書を配付しております。こちらは大部となりますので、傍聴の方には配付しておりません。ウェブサイトには資料として掲載いたしますので、そちらをごらんいただければと思います。

 また、一番後ろに、右肩に「参考資料委員限り」と記載しております各社の出荷量と副作用の発現頻度をまとめた資料を1枚お配りしております。

 不足や落丁等ございましたら、事務局にお申しつけをお願いいたします。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 では早速、議題1の各ワクチンの安全性について入りたいと思います。事務局から資料1~3まで説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局より資料の御説明をさせていただきます。

 まず、先ほどごらんいただきました資料一覧をごらんください。本日、副反応報告状況について御報告させていただきますワクチンについてですが、過去の合同会議での御議論を踏まえまして、比較的同時接種が行われやすいワクチンとそうでないワクチンとでグループを分けて報告を行うこととされております。本日の検討会におきましては、主に単独接種が行われているワクチンでございますMR、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、A型肝炎、23価肺炎球菌、インフルエンザの各ワクチンについて御報告をさせていただきます。

 インフルエンザワクチンを除きまして、前回は本年1月20日に開催された合同会議において、昨年10月末までの副反応の状況について御報告したところでございますので、これに引き続きまして本日は、昨年11月1日から本年6月末までに報告された各ワクチンの副反応の状況について御報告をさせていただきます。

 それでは、各ワクチンの副反応報告状況について順に御説明させていただきます。資料1をごらんください。「乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MR)の副反応報告状況について」でございます。

 1ページの見出しの下に記載していますとおり、MRワクチンは現在3つの製造販売業者から計3種類の製品が製造販売されておりますが、それらについて昨年11月1日から本年6月30日までに報告された副反応報告を合計して集計したものが、真ん中に掲げております表でございます。

 期間中の医療機関への納入数量から接種可能延べ人数を約142万人と概算いたしまして、製造販売業者からの副反応報告数が8件、報告頻度は0.001%。医療機関からの報告数は非重篤のものも含めまして21件、報告頻度は0.001%。そのうち重篤なものは9件、報告頻度は0.001%となります。なお、副作用報告数のうち接種日も集計対象期間内であったもののみをカウントした数を各報告数の欄の下に括弧書きで記載しております。

 また、それぞれの企業ごとの出荷数量をもとに同様に計算した結果につきましては、各社の出荷量と副作用の発現頻度として委員限りの資料として机上にお配りしておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 その下にございます表は、期間中の重篤症例について転帰の情報をまとめた表となっております。今回の報告期間では死亡症例及び後遺症症例の報告はございませんでした。

 2ページ目からは、副反応報告の個別症例の情報を接種日順にリストとしてまとめたものを掲載しております。この集計では、同時接種ワクチンとして報告された事例も含めて集計しております。

 例を挙げさせていただきますと、2ページのナンバー3の症例では、ワクチン名の欄はプレベナー13となっており、プレベナー13の製造販売業者から報告されたものですが、同時接種ワクチンにMRワクチンも含まれておりますので、MRワクチンの副反応報告としてもカウントし、それぞれのリストいずれにも掲載することとしております。以下、ほかのワクチンについても同様に集計を行っておりますので、御留意をお願いいたします。

 2ページが製造販売業者からの報告、3ページが医療機関からの報告のうち重篤症例、4ページが医療機関報告のうち非重篤症例の症例ごとのリストとなっております。

 続いて、5ページをごらんください。こちらはアナフィラキシーが疑われる副反応症例について過去の報告分も含めて症例数をまとめた表でございます。今回の報告対象期間では、アナフィラキシーとして報告された症例はございませんでした。

 6ページは、本年9月に報告された症例であり、本来は今回の報告対象にはならない症例でございますが、死亡症例であり、専門家による評価結果が得られたため、今回早目に御報告させていただくものでございます。

MRワクチンの単独接種を行った10歳未満の男児が、接種当時に発熱し、翌朝うつ伏せで嘔吐の跡が見られ、呼吸停止した状態で発見された症例です。調査の結果としまして、発見時の状況からは嘔吐による窒息で死亡した可能性が考えられ、ワクチン接種との因果関係は不明であるとされております。

 7ページ以降には、委員限りでございますが、この症例より詳細な調査結果と、3名の医師に概要を見ていただいた評価結果を記載しております。適宜御参照いただけますと幸いです。この詳細情報に関連しての御発言に当たりましては、患者個人の特定がなされないように御配慮をお願いいたします。

 また、一番後ろの11ページ、12ページには、平成25年4月以降に報告された副反応報告を種類別に件数をまとめたものを掲載しておりますので、参考としてごらんいただければと思います。

 以下、そのほかのワクチンにつきましても同様に、最後に副反応種類別の件数の表を掲載してございます。

 続きまして、資料2「乾燥弱毒生麻しんワクチンの副反応報告状況について」をごらんください。

 先ほどの資料1と同様に、副反応報告数を真ん中の評価にまとめております。昨年11月1日から本年6月末までの接種可能延べ人数は約5万人。これに対して製造販売業者からの報告数は3件、報告頻度は0.01%。医療機関からの報告は2件、報告頻度は0.004%。これは2件ともに重篤な症例となっております。

 また、この下には、転帰別の報告数をまとめた表を掲載しており、ごらんのとおり今回の報告期間では死亡症例または後遺症症例の報告はございませんでした。

 2ページが製造販売業者からの報告のリスト、3ページから医療機関からの報告のリストとなっております。

 4ページには、アナフィラキシーとして報告された件数をまとめており、今回はアナフィラキシーとして報告された症例はございませんでした。

 続いて、資料3「乾燥弱毒生風しんワクチンの副反応報告状況について」をごらんください。

 昨年11月1日から本年6月末までの接種可能延べ人数は約8万人。これに対して製造販売業者からの報告数は1件、報告頻度は0.001%。医療機関からの報告は2件、報告頻度は0.002%。うち重篤例が1件、報告頻度は0.001%となっております。

 また、その下には転帰別の報告数をまとめた表を掲載しており、ごらんのとおり死亡症例または後遺症症例の報告はございませんでした。

 2ページが製造販売業者からの報告、3ページが医療機関からの重篤症例、4ページが非重篤症例の報告のリストとなっております。

 5ページには、アナフィラキシーとして報告された件数をまとめており、今回はアナフィラキシーとして報告された症例はございませんでした。

 資料1~3に関する事務局からの説明は以上でございます。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの御説明につきまして、御質問・御意見はありませんでしょうか。

 桃井委員どうぞ。

○桃井副反応検討部会長 これは前にも御要望申し上げたのですが、非重篤症例、重篤例には10歳未満でも年齢が書かれるようになりましたが、死亡例が相変わらず10歳未満という記載なので、1歳と9歳ではまるで考えるべきことが異なってきますので、なおかつ、ここには個人を特定されるような情報が入っておりませんので、ぜひ年齢を記載できるように御検討いただければ、情報から評価しやすいと思いますので、よろしく御検討ください。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。御指摘を踏まえまして、次回以降の資料の改善について検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○五十嵐安全対策調査会長 御指摘ありがとうございました。御検討をよろしくお願いいたします。

 ほかに、いかがでしょうか。これまでのデータと今回のデータで余り大きな差はないと思われますけれども、まとめさせていただいてよろしいですか。今回、副反応の報告頻度は、これまで検討したワクチンに比べて特段高いということはないと思います。それから、今回の集計対象期間につきましては、アナフィラキシーの症例、後遺症症例、死亡症例等の報告はありませんでした。3番目に、集計対象外ではありますけれども、MRワクチン接種後に死亡された症例が1例報告されまして、調査結果といたしましては、ワクチン接種との因果関係は不明であるというまとめ方でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 そうしますと、この内容を踏まえまして、これらのワクチンの取り扱いにつきまして、これから変更する必要があるかどうか御意見いただきたいのですけれども、いかがでしょうか。

 特にないようですので、MRワクチン、麻しん、風しんワクチン等につきましては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。では、そのようにいたしたいと思います。

 以上で、MR、麻しん、風しんの各ワクチンの副反応報告は終了いたしました。

 引き続いて、資料4~6までの説明をお願いいたします。

○事務局 続きまして、資料4~6の御説明をさせていただきます。

 資料4「乾燥弱毒生おたふくかぜワクチンの副反応報告状況について」をごらんください。

 昨年11月1日から本年6月末までの集計結果については、真ん中の表のとおりでございまして、接種可能延べ人数を約69万人と推計し、製造販売業者からの報告数が16件、報告頻度は0.002%。医療機関からの報告が24件、報告頻度は0.003%。そのうち重篤なものは15件、報告頻度は0.002%となっております。

 その下には転帰別の報告件数をまとめておりますが、後遺症症例や死亡症例の報告はございませんでした。

 2ページからは各副反応報告の症例一覧を記載しており、2ページが製造販売業者からの報告、4ページが医療機関からの重篤症例、6ページが非重篤症例となっております。

 また、髄膜炎等として報告されている症例のうち髄液の検査結果が得られているものについては、副反応名の欄に*をつけて検査結果を記載しております。

 7ページは、アナフィラキシーが疑われる症例報告のまとめですが、今回の報告期間内において2件アナフィラキシーとして報告された症例がございました。その概要を8ページにお示ししております。PMDAにおいて専門家の評価をいただいた結果、一番右端の総合評価の欄に記載のとおり、2件ともブライトン分類レベルは3以下であり、アナフィラキシーとは判断できないとされております。

 次に、資料5の御説明をさせていただきます。「乾燥弱毒生水痘ワクチンの副反応報告状況について」をごらんください。

 昨年11月1日から本年6月末までの集計結果については、真ん中の表のとおりであり、接種可能延べ人数を約200万人と推計し、製造販売業者からの報告数が10件、報告頻度は0.001%。医療機関からの報告は34件、報告頻度は0.002%。そのうち重篤なものは18件、報告頻度は0.001%となっております。

 その下には転帰別の報告件数をまとめておりますが、医療機関報告において2件の死亡症例が報告されております。

 2ページからは各副反応報告の症例一覧を記載しており、2ページが製造販売業者からの報告、3ページが医療機関からの重篤症例、5ページが非重篤症例となっております。先ほどのおたふくかぜワクチン同様に、髄膜炎等の症例で検査結果が得られているものについては、副反応名の欄に*で検査結果をお示ししております。

 7ページは、アナフィラキシーが疑われる症例報告のまとめですが、今回の報告期間内にはアナフィラキシーとして報告された症例はございませんでした。

 8ページは、死亡症例報告2件の概要を表にしたものでございます。

 1例目、インフルエンザ、不活化ポリオ、水痘の3種類のワクチンの同時接種を受けた10歳未満の女児について、接種18日後に発熱、嘔吐、けいれんが出現し、急性脳症と判断され、21日後に死亡が確認された症例です。調査の結果は、急性脳症により死亡した可能性が考えられたが、ワクチン接種との因果関係は不明であるとされております。

 2例目、脳性麻痺や呼吸不全等の基礎疾患を持つ10歳未満の女児が水痘ワクチンの単独接種を受けた症例で、接種25日後に水疱が出現。接種32日後にDICを発症し、接種36日後に死亡。水疱液からワクチン株由来のウイルスが検出された症例です。調査の結果、水痘ワクチンにより誘発されたSIRSから間質性肺炎による呼吸不全及びDICを来したと考えられ、ワクチン接種との因果関係は否定できないとされております。

10ページ以降には、委員限りとしてこれらの症例のより詳細な調査結果を記載しております。

 続きまして、資料6「乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチンの副反応報告状況について」でございます。

 昨年11月1日から本年6月末の接種可能延べ人数は約10万人。これに対して製造販売業者からの報告数は0件。医療機関からの報告は3件、報告頻度は0.003%。うち重篤例が1件、頻度は0.001%となっております。

 また、その下には転帰別の報告数をまとめた表を掲載しており、死亡症例または後遺症症例の報告はございませんでした。

 2ページが医療機関からの重篤症例の報告、3ページが非重篤症例の報告のリストとなっております。

 4ページには、アナフィラキシーとして報告された件数をまとめており、今回は報告がございませんでした。

 資料4~6の説明は、以上でございます。

○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。

 ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問・御意見いかがでしょうか。

 多屋委員どうぞ。

○多屋委員 水痘ワクチンのことなのですけれども、もともと基礎疾患をお持ちのお子様に対して開発されたワクチンで、非常に副反応が少ないワクチンなのですが、今回死亡の方がお二人いらっしゃいますが、これまでにどのくらいの死亡報告がなされているのか、もし、わかりましたら教えていただけますでしょうか。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。私どものデータベース等で把握できる範囲でございます平成16年以降でございますけれども、今回の症例も含めまして計4例の報告を受けているところでございます。そのうち3例につきましては、今回の症例以外にも慢性のGVHDや腎移植後であるなど、何らかの基礎疾患をお持ちの患者となっておりました。

 簡単ですが、以上でございます。

○多屋委員 これまで免疫不全の基礎疾患をお持ちのお子さんの場合は、そういうことが確かにあったと思いますけれども、特に今回頻度がふえているということはなさそうですので、頻度についてはわかりました。症状なども見てみますと、特に、重篤な症状がふえているということはなさそうに思いましたので、ありがとうございます。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。

 亡くなった方のお一人も、ワクチンを打ってから水痘の症状が出るのが25日と長く、免疫抑制状態があったのではないかと思わせる患者さんのように感じるのですが。

○多屋委員 国内の水痘ワクチンは、めったに水疱ができることはないので、免疫機能が低下している状態だったのかもしれないとは思いました。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 柿崎委員どうぞ。

○柿崎委員 副反応ではないのですけれども、A型肝炎ワクチンが市場で供給不足になっているようなのですが、見通しとかはここで聞いてもわからないでしょうか。

○五十嵐安全対策調査会長 いかがですか、お答えできますか。

○正林健康課長 この場はちょっとお答えするような場ではないような気はしますけれども、今まで化血研でいろいろなことがあって、一応、安全性を確認してもらいながら感染症部会などでいろいろ御意見をいただきながら、その都度ワクチンをリリースするかどうかを判断していますので、いずれA型肝炎についても同じような扱いになるかなと思います。

○柿崎委員 この製剤しかないので、患者さんが希望されたときに今打てないような状況になってしまっているのですけれども、ここで言ってもしようがないですね。わかりました。

○五十嵐安全対策調査会長 ほかにいかがでしょうか。

 桃井委員どうぞ。

○桃井副反応検討部会長 資料4のおたふくかぜワクチンですが、もともと無菌性髄膜炎の副反応報告が少なからずあるのですが、短期間のデータ、件数だけでは集積しているのか、していないのかがわからないので、パッと見たところ集積性はなさそうな感じですけれども、例えば、製造企業の集積性あるいはロットの集積性とかあるいは頻度がある時期に急にふえているとか、そういう追跡できるようなデータをそちらできちんと持っておられるでしょうか。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。御指摘のとおりでございまして、まず、累積の件数だけであれば資料4の一番末尾につけておりますこれまでの副作用報告の累積の件数リストがございます。こちらで無菌性髄膜炎等の件数が、平成25年4月1日から何件集積しているかということは把握できるようになっているのですが、御指摘いただいたような、ロット別ですとか時期的なものについては、この資料中では集計しておりませんので、資料の作成方法について検討させていただきたいと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 多屋委員どうぞ。

○多屋委員 私も、おたふくかぜワクチン接種後の無菌性髄膜炎は注意して見ているのですけれども、これまで見ている限りでは、むしろ報告の頻度が少なくなっていると逆に感じているところです。なので、ふえているというよりも、以前言われていた頻度よりも少ないのではないかという印象は持っております。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 桃井委員どうぞ。

○桃井副反応検討部会長 以前多かったときよりも減っているのは確かなのですけれども、随時一定の製造ではなくて、ワクチンの製造というのは非常に変化し得るものですので、こういう比較的多い副反応に関しては頻度をきちんとフォローされて、一定時期以前よりはふえていないかというデータをお持ちになられたほうが、事前にリスクをキャッチできるかなと思いました。その意味で御質問しました。

○事務局 ありがとうございます。御指摘を踏まえまして、内部で検討させていただきたいと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 永井委員どうぞ。

○永井委員 似たような発言で申しわけないのですけれども、以前、おたふくかぜワクチン接種後に発症した無菌性髄膜炎の接種後1週間以内の症例を集めて、それを検討したら、やはり結構紛れ込みがあったと。純粋なワクチン株はそんなに多くなかったという論文発表があったと思いますけれども、ここに書いていただいているケースで、ワクチンのDNAが検出されたという記載もありますけれども、書いていないのが結構あるので、それは検査されていないということですかね。ワクチン接種後に発症する髄膜炎に関しては、患者さんにとっても、もし発症した場合にはきちんとDNAを調べて、ワクチンと関係しているかどうかをチェックするような形があったほうがいいのかなと思いました。

○五十嵐安全対策調査会長 紛れ込みかどうかを判断する上では、その点は非常に重要ではないかと思います。ありがとうございます。

 そのほか、いかがでしょうか。

 それでは、たくさんの議論はありませんでしたが、まとめに移ってよろしいでしょうか。まず、副反応の報告頻度につきましては、これまでに比べて特段高いということはなかったようです。2番目に、アナフィラキシーとして報告された症例が、おたふくかぜワクチンで2例ありましたけれども、専門家の評価の結果アナフィラキシーとは判断できないという最終的な評価でした。それから、今回の集計対象期間につきましては、後遺症症例の報告はありませんでした。それから、死亡症例の報告が水痘ワクチンで2例ありましたけれども、専門家の評価の結果、1例は因果関係が不明、もう一例は因果関係は否定できないと評価されております。

 そのようなまとめ方でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 それでは、この内容を踏まえまして、現状の取り扱いを変更する必要があるかどうかについて御意見をいただきたいと思います。

 特にございませんか。それでは、御審議いただきましたワクチンにつきましては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 では、水痘、おたふくかぜ、A型肝炎の各ワクチンの副反応報告は終了したいと思います。

 続きまして、資料7と8の御説明をお願いいたします。

○事務局 続きまして、資料7について御説明させていただきます。「23価肺炎球菌ワクチンの副反応報告状況について」をごらんください。

 昨年11月1日から本年6月末までに報告された副反応報告を合計して集計した結果を、真ん中の表に記載しております。期間中の医療機関への納入数量から接種可能延べ人数を約321万人と概算いたしまして、製造販売業者からの副反応報告数が113件、報告頻度は0.004%。医療機関からの報告数は非重篤のものも含めまして383件、報告頻度は0.01%。そのうち重篤なものは90件、報告頻度は0.003%となっております。

 その下の重篤症例の転帰の表ですが、今回の報告期間では製造販売業者と医療機関からの報告を合わせまして、後遺症症例4例と死亡症例9例の報告がございました。

 2ページ目からは、副反応報告の個別症例の情報を接種日順にリストとしてまとめたものを掲載しております。2~8ページが製造販売業者からの報告、9~15ページが医療機関からの報告のうち重篤症例、16~37ページが非重篤症例の症例ごとの情報となっております。

 続きまして、38ページをごらんください。こちらはアナフィラキシーが疑われる副反応症例について、過去の報告分も含めて症例数をまとめた表でございます。今回の報告では、アナフィラキシーが疑われる症例が5例報告されておりますが、PMDAにおいて専門家の評価をいただいた結果、5例ともにブライトン分類レベルは3以下であり、アナフィラキシーとは判断できないとされております。

 その詳細を39ページから掲載しておりまして、評価結果は、それぞれ一番右端の総合評価の欄に記載しております。

 続きまして、42ページをごらんください。こちらは過去の合同会議において既に報告された症例ですが、その後得られた追加情報において新たにアナフィラキシーが疑われることが判明したため、改めて専門家の評価をいただいたものです。その結果、アナフィラキシーとは判断できないとされております。

43ページからは、後遺症症例の概要をお示ししております。

 1例目でございます。64歳女性で、急性汎発性発疹性膿疱症を発症し、その後、色素沈着の後遺症が残った症例です。専門家の意見としては、クロラムフェニコールもパッチテスト陽性であり、クロラムフェニコールの影響も考えられるとされております。

44ページのナンバー2、65歳男性で、接種後4時間から両四肢のけいれん発作が発生し、その直後に左鼡径部の腫脹が認められ、後遺症として鼡径ヘルニアが残ったという症例です。専門家の意見としては鼡径ヘルニアについては、けいれんによる二次的な症状であり、ワクチンとの直接の因果関係はないとされております。

 ナンバー3、68歳男性の症例で、接種後に肺炎球菌感染症を発症し、四肢の運動障害が改善せず、寝たきり、中心静脈栄養状態で他院への転院となった症例です。専門家の意見としては、感染した肺炎球菌の莢膜血清型は23価肺炎球菌ワクチンに含まれない型であり、ワクチンとの関連性は認められないとされております。

45ページのナンバー4、65歳男性患者。接種部位を中心に痛みを伴う腫脹、発赤、熱感が出現し、その後徐々に回復するも半年経過しても腫脹、痛み等が残っているという症例です。専門家の意見は、注射部位に生じた蜂巣炎または蜂巣炎様反応と思われるとされております。

 続きまして、46ページからは死亡症例の概要をお示ししております。

 まず、46ページの1番の症例ですが、70歳代の女性。接種当日の夕方から体調不良を訴え、翌日嘔吐、倦怠感が出現し、全身状態が悪化。搬送先にして死亡が確認された症例ですが、調査の結果としては、血液培養の結果から敗血症により死亡したと考えられ、ワクチン接種との因果関係は不明と評価されております。

 その下、単独接種の表にまいりまして、ナンバー1、90歳代女性の患者で、接種2日後に肺炎により死亡した症例ですが、情報不足のため接種との因果関係は判断できないとされています。

47ページのナンバー2、60歳代の女性で、接種3日後に全身倦怠感、嘔吐、褐色尿、黄疸が発現。接種32日後に、腸腰筋及び左後腹膜に血腫及び出血が認められ、同日死亡した症例です。調査の結果としては、死因は肝不全に伴う腹腔内出血とされたが、接種以前から肝障害が存在していた可能性や内服薬の影響も考えられ、接種との因果関係は不明とされております。

 続いて、ナンバー3、80歳代の女性患者。接種当日に発熱し、翌日に呼吸状態が悪化、接種2日後に発熱及び呼吸不全により死亡した症例です。調査の結果、ワクチン接種との因果関係は不明とされております。

 以下、ナンバー4~6までの3症例は、いずれも詳細情報が得られず情報不足のため、ワクチン接種との因果関係は判断できないとされております。

 ナンバー7につきましては、現在、詳細情報を調査中となっておりますので、次回以降に調査結果を御報告させていただきます。

 また、ナンバー8の症例につきましては、今回の集計対象期間が過ぎてから報告された症例ですが、今回早目に御報告させていただくものです。先ほどと同様に情報不足のため、ワクチン接種との因果関係は判断できないとされております。

49ページ以降には委員限り資料として、今まで御説明しました死亡症例の概要をそれぞれお示ししております。

 続きまして、資料8「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌ワクチン)~定期接種導入後の副反応報告の状況~」をごらんください。

23価肺炎球菌ワクチンは昨年10月より定期接種の対象になったことから、接種者数が大幅に増加しておりますので、その前後での副反応報告の頻度の比較についてまとめた資料を用意させていただいております。

 スライド2ページの最初の棒グラフでございますが、重篤な副反応の報告について定期接種化前後で報告頻度がどのように変化したかを表したもので、白が定期接種化前、黒が定期接種化後となっております。蜂巣炎、アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、血小板減少及び全重篤事象をそれぞれ比較しておりますが、このグラフを見る限り全重篤事象の報告頻度はほとんど変化がない一方、蜂巣炎の報告頻度が若干上昇しているかと思われます。

 裏面のスライド3ページと4ページが、先ほどと同じ副反応報告頻度について2006年の販売開始以降の1年ごとの報告頻度をそれぞれ示したものとなっております。これを見ますと、先ほど上昇していました蜂巣炎ですが、年によっては直近の定期接種化後よりも報告頻度が高い時期もあり、これまでの変動の範囲内と見ることもできるかと思われます。

 簡単でございますが、資料7及び資料8についての御説明は以上となります。

○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。

300 万人以上の方に接種されている肺炎球菌ワクチンの御説明をいただきましたけれども、御質問・御意見いかがでしょうか。

 稲松委員どうぞ。

○稲松委員 蜂巣炎から注射部位の発赤・疼痛など、いろいろな形であちこちにばらまかれて集計されておりまして、全部だと100点超えるわけですよね。ただ、そういう症例は現象としては同じものを別の言葉で表現されているような気がいたしますので、こちらのほうで何か基準化して、その基準の中のどれに入るかという形でできると大変評価しやすいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○五十嵐安全対策調査会長 資料7の69ページのことですね。

○事務局 申しわけございません、御指摘のとおり今の資料ではあちこちにばらけてしまっている状況でございますので、御指摘を踏まえましてどのような記載ができるか検討させていただきたいと思います。

○稲松委員 ある程度こちらからの基準というか、層分けした評価の仕方を手引きで出すといいような気がちょっとしますが、いかがでしょうか。

○事務局 御指摘を踏まえまして、できるだけ検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○稲松委員 それと、もう一ついいですか。副反応として報告されている中に、例えば、誤嚥性肺炎とかクリプトの肺炎が副作用として上がってきているんですよね。それは恐らくテレビで、肺炎は死因の30%なのでワクチンを打ちましょうみたいな宣伝をしていますので、それでいろいろ間違う人がいるのかなという気がして、本来無効症例に対しての現象で、それを副反応と言っていいのかどうか、いかがなものですか。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。現状の副反応報告制度では、今回の資料もそうですけれども、基本的に医療現場等からいただいた報告は、全て資料として掲載するという形で作業させていただいておりますので、私どものほうで選別をするのはなかなか難しい状況ではございますが、御指摘を踏まえまして、どういった資料の改善等ができるかについて検討させていただきたいと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 岡部委員どうぞ。

○岡部委員 予防接種の分科会でも言葉の問題が出てきておりますが、広く届けていただいてそれを評価するという意味では、やはり多く含まれているほうがいいと思うんです。副反応らしいからということだけでいくと狭くなってくるので。ただ、やはりこれは副反応の報告ではなくて、そういうことを一切合財含めた有害事象報告であるという認識と理解が必要なので、どうしても言葉が先行してしまって、副反応が生じた症例、その副反応報告状況が0.003%とか、これが全部数字で前面に出てきてしまうところに問題があるので、なるべく近い将来に用語の整理をしていただければと思いますが、これは分科会のほうでも提言しておりますので。

○事務局 ありがとうございます。今の御指摘を踏まえまして、検討させていただきます。

○五十嵐安全対策調査会長 よろしくお願いいたします。

 多屋委員どうぞ。

○多屋委員 かなり頻度が高い症状につきましては、こういう報告よりも、むしろもう少し前向きに、どのくらいの頻度で接種から何日後ぐらいにこういうことが起こるのかということがわかるような調査方法を、そろそろ考えていったほうがいいのではないかと感じます。

 もう一つ、先ほどの御紹介で、肺炎球菌ワクチン接種後の症状として、ワクチンの中に含まれていない型の肺炎球菌による感染症の症例が含まれていたのですけれども、報告していただくのをやめるということでないのであれば、副反応とは少し別にしたほうがいいかなと思いますが、どうでしょうか。

○五十嵐安全対策調査会長 表記の仕方ということでしょうか。そこで少し配慮してもいいかもしれないということですね。有害事象として起きたことは全て記録していくというのが今のやり方ですので、そのときに誤解を招かないようにという配慮をしていただきたいと理解してよろしいですか。

○多屋委員 そういうふうに分けて集計することができれば、よりよい方法になるのではないかと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 では、それも検討していただけますか。よろしくお願いします。

 ほかはいかがでしょうか。このワクチンは接種部位に炎症反応を強く起こすことが多いようです。そもそも、CRP (C-リアクティブプロテイン)のC は肺炎球菌のキャプセルですから、肺炎球菌のワクチンは接種部位の炎症を惹起する力が強い作用がもともとあると理解はしているのですけれども、いかがでしょうか。

 ほかに御意見・御質問はありませんか。それでは、まとめさせていただいてよろしいでしょうか。これまで議論されました内容をまとめたいと思います。まず、副反応の報告頻度は、これまでに比べまして特段高いということはないようです。それから、アナフィラキシーとして報告された症例が5例ありましたけれども、専門家の評価の結果、いずれもアナフィラキシーとは判断できないという結論でした。それから、後遺症症例の報告は4例ありました。それから、死亡症例も9例報告がありましたけれども、ワクチン接種との因果関係はいずれも不明あるいは判断できないという結論でした。このようなことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 それでは、この内容を踏まえまして、現状の取り扱いを変更する必要があるかどうか御意見をいただきたいと思います。

 特にございませんか。それでは、御審議いただきましたワクチンにつきましては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 以上で、23価肺炎球菌ワクチンの副反応報告は終了したいと思います。

 では、続いて、資料9の説明をお願いいたします。

○事務局 それでは続きまして、資料9「インフルエンザワクチンの副反応報告状況について」、御説明させていただきます。

 資料9の冒頭に記載しておりますとおり、今回は2014~2015年のシーズンとして、昨年10月から本年6月末までに報告されました副反応報告のまとめについて御報告させていただきます。本年3月に開催致しました合同会議において、昨年12月までに報告されたデータを用いて中間報告をさせていただいておりますので、今回の資料は、それらの中間報告の内容も含めた2014年、2015年シーズン全体の報告数を御報告いたします。

 1ページは、副反応報告件数を1カ月ごとに集計しております。一番下の合計件数は、製造販売業者からの報告数が63件、医療機関からの報告件数が244件、そのうち重篤例が99件となっております。

 表の欄外の注意点のうち、上から2番目の※に記載しておりますが、医療機関へのワクチン納入数量から推定した接種可能人数はおよそ5,238万人となっており、これを用いた報告頻度は表の一番下に記載しておりますが、ほかのワクチンと比較しても特段高い状況ではございません。

 死亡例につきましても、同じ表の中に記載しておりまして、製造販売業者と医療機関からの報告を合計しますと16件となっております。これらにつきましては、後ほど資料の後ろのほうで御説明させていただきます。

 2ページには、医療機関報告のうち医療機関から関連があるとして報告されたものと、そうでないものに分けた集計結果。

 3ページは、患者の性別や年齢の内訳を集計した結果を掲載しております。また、その下には参考としまして、昨シーズン、一昨シーズンのそれぞれの副反応数を掲載しております。これらと比べましても、副反応の発生率が特段高いという状況ではございませんでした。

 さらに4ページ目からは、企業から報告された副反応報告の症例ごとのリストを掲載しております。

 同様に9ページからは、医療機関からの重篤症例報告、16ページからは非重篤症例を記載しております。

28ページは、アナフィラキシーとして報告された症例の症例数とブライトン分類で3以上とされた報告数並びにその報告頻度をワクチンの各製造業者及び製造ロットごとに集計した表となっております。一番下に合計数を記載しておりますが、今回のシーズンではアナフィラキシーとして合計28件の報告があり、そのうちブライトン分類で3以上とされたものは10件ございました。

29ページは、昨シーズンの調査結果であり、報告数に大きな変化はございませんでした。

 また、製造販売業者ごと、ロットごとに、報告数や報告頻度につきましてばらつきがございますが、特定のロットのみが高くなっているということもございませんでした。

30ページからは、アナフィラキシーとして報告された28件の症例ごとの概要を記載しております。それぞれ右端の欄に専門家評価の結果として、ブライトン分類の結果とワクチンとの因果関係について記載しております。

35ページをごらんください。ギラン・バレー症候群あるいはADEMの可能性のある症例として、今回は計24例の報告がございました。専門家による評価を行ったところ、そのうちギラン・バレー症候群またはADEMとして否定できない症例として、それぞれ5症例ずつ評価されておりまして、それらのリストを35~36ページにわたって記載しております。

 また、全ての症例の概要を37ページ以降に掲載しており、専門家の意見を一番右側の欄にそれぞれ記載しております。

 続いて、47ページからは後遺症症例の概要を記載しております。

 1例目から順番に御説明させていただきます。68歳男性、インフルエンザワクチン接種7時間後ごろ、外食中に飲酒し、店を出たところで呼吸困難を発症し、救急要請。入院・加療後、廃用性筋萎縮が残存したという症例です。専門家の評価の結果、基礎疾患のCOPDの急性増悪も考えられるが、ワクチン接種の影響も否定できないとされております。

 2例目は、90歳女性。接種12日後より左手を動かさなくなり、神経痛性筋萎縮症との診断。その後、疼痛は緩和したものの麻痺が残存した症例です。専門家の意見としては、接種部位の情報がなく、筋電図検査などで末梢神経障害を確認する必要があるとされております。

 3例目は、48歳女性。接種後から手指足趾のしびれが出現し、接種3週間後ごろには筋力低下で箸や荷物が持てなくなり、2カ月後ごろから筋力が徐々に回復。脱髄型のギラン・バレー症候群として報告された症例です。専門家の評価としては、ギラン・バレー症候群と診断でき、接種との因果関係は否定できないとされております。

48ページの最後の4例目は、現在、専門家の意見も含め調査中となっておりますので、次回以降の会議において詳細を御報告させていただく予定としております。

49ページからは、死亡症例の概要リストを掲載しております。一番左のナンバーが○で囲まれているものが、今回の新規の症例。○がついていないものにつきましては、3月の中間報告の際に評価結果も含めて御報告済みの症例となりますので、今回は○がついたもののみ御説明させていただきます。

 まず、49ページの2番の症例でございますが、肺炎球菌ワクチンとの同時接種症例であり、先ほど御説明しておりますので、次のページに進ませていただきます。

 5番の症例でございます。10歳未満の女児で、接種2日後にうつ伏せで呼吸停止の状態で発見され、死亡が確認された症例です。調査の結果、剖検により気管支肺炎が認められたが直接の死因とまでは考えられず、ワクチンとの因果関係は不明とされております。

 6番、100歳代の女性で、接種3日後に発熱、意識レベル低下が出現し、接種10日後に死亡した症例です。評価の結果、死因は肺炎とされたが、基礎疾患の悪化も考えられ、ワクチン接種との因果関係は不明とされております。

51ページ、10番、10歳未満の男児。接種4日後にうつ伏せで呼吸停止の状態で発見された症例で、死因は原因不明の乳幼児突然死とされております。評価の結果、情報不足のためワクチン接種との因果関係は不明とされています。

11番、60歳男性。接種10日後に両下腿に紫斑が出現し、アレルギー性紫斑病と診断され、その後、消化器症状、下血、左肩痛が出現し、接種26日後に慢性心不全により死亡した症例です。評価の結果、ワクチン、またはその他の要因によりアレルギー性紫斑病を発症し、その後、下血を契機として慢性心不全が悪化し、死亡したと考えられたが、接種から下血まで時間が経過しているため、ワクチン接種との因果関係は不明とされております。

12番、40歳男性。接種翌日に自宅で倒れた状態で発見され、接種3日後に劇症肝炎と診断されDICを発症、肺炎及び下血を併発し、接種44日後に死亡確認された症例です。評価の結果、死因とされた劇症肝炎は接種から発症までの期間が短く、併用薬の関与も疑われるため、因果関係は不明とされております。

13番の症例については、こちらには記載しておりませんが、水痘ワクチンとの同時接種症例で、前の資料で御説明しておりますので、省略させていただきます。

14番、70歳代の女性。接種5日後に呼吸困難を出現し、間質性肺炎急性増悪と診断。接種10日後に死亡確認された症例です。評価の結果、間質性肺炎急性増悪または急性呼吸促迫症候群を合併し、最終的には播種性血管内凝固症候群も合併して死亡したと考えられ、ワクチン接種との因果関係は不明とされております。

 最後の15番の症例につきましては、現在調査中となっておりますので、次回以降に結果を御報告させていただく予定でございます。

 今回、御紹介させていただいた症例については、53ページ以降にそれぞれより詳細な調査結果資料を掲載しておりますので、御参照いただければと思います。

 長くなりまして恐縮でございますが、資料9に関する説明は以上でございます。

○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問・御意見いかがでしょうか。

 岡部委員どうぞ。

○岡部委員 死亡症例を拝見していて、52ページの15番ですけれども、ここまでもいろいろバラバラなものもあるのですが、接種8カ月後死亡というものも届けられているんです。一応、副反応報告で届けるのは、ある一定の幅を狭めているというか、一定の期間を求めているのですけれども、こういうものはどういう基準というか、どういうことで届けられているのでしょうか。今回はまだ調査中ということなので、わからないのだろうと思いますが。

○事務局 確認させていただきたいと思いますが、特段何カ月後までといったような基準はございませんので、恐らく医療機関の先生の御判断があって御報告があったものと思われます。

○岡部委員 前の肺炎球菌か何かでしたか、性別が不明で、接種日が不明で、死亡日が不明で、そうかもしれないというのが届けられているんですね。それは先ほど申し上げました趣旨で言えば、届け出ということでいいのかもしれないけれども、それを引っくるめた副反応が生じた数字としてでていくことになるのはどうも合点がいかないというか、納得がいかないのですが。

○事務局 これも先ほどの御指摘と関係するお話かと思いますけれども、私どもは、原則として医療現場あるいは企業からの報告は全て受け付けるという形で作業させていただいておりますので、資料作成などの中で、何らかのわかりやすい形で作成できないか検討させていただきたいと思います。

○岡部委員 これだけいろいろな情報が集まってくるようになったのは大変いいことだと思うのですけれども、それを今度どう評価するかについては、どういう届出をしていったらいいか、それに関する検討をどこかできちんとやっていかないと、踏襲してずっとやっていくのでは、せっかくのこういう資料が信頼度としては落ちてくるのではないかと思います。ぜひ、そういうものを検討する場所を設定するなり、あるいはきちんとやるなり、前向きに検討していただきたいと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 これも大変重要な御指摘だと思いますので、今すぐ御対応できないと思いますけれども、御検討をよろしくお願いいたします。

 多屋委員どうぞ。

○多屋委員 今のことに関連してなのですが、医療機関からの副反応報告書の下のほうには、かなり小さい文字ですけれども明記されていまして、法に基づいて届け出義務がある症状以外の部分は、医師がワクチンとの関連があると認めた場合に、その他の反応として報告するようにと記載されていますので、そういうことを考えますと、例えば、医師が接種から8カ月後に何らかの重篤な状態になったということをワクチンによって起こったと考えているとはちょっと考えにくいので、報告していただく先生方に明確にお伝えするというのは一つの方法かと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○事務局 報告様式の改善につきましても、この場で具体的なところまでお答えすることが難しいのですけれども、御指摘のように、医療現場の先生方に明確に理解していただいた上で御報告いただけるような、様式の変更に限らないとは思いますが、何らかの方策がないかにつきまして考えさせていただきたいと思います。

○多屋委員 報告書の様式は変えなくても今のものでいいと思いますけれども、書いてあることがもうちょっと目立つというか、こういう人はぜひ報告してくださいというのがわかってもらえると。今のもので全然悪くないと思うのですが、そういう意味でした。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。特にございませんか。

 それでは、まとめをしたいと思いますが、よろしいでしょうか。インフルエンザワクチンにつきましては、副反応の報告数、死亡数、アナフィラキシーの発生頻度等につきましては、昨シーズンのそれらと同程度であったというまとめでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 それでは、この内容を踏まえまして、現状の取り扱いを変更する必要があるかどうか御意見いただきたいと思います。特にございませんか。

 それでは、御審議いただきましたワクチンについては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないという評価でよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。

 以上で、インフルエンザワクチンの副反応報告は終了したいと思います。

 各ワクチンの副反応報告状況にかかわる審議は以上で終了したいと思います。

 続きまして、議題2の報告事項について事務局から報告をいただきまして、その後で祖父江参考人から資料10、11について御説明をお願いいたします。

 まず、事務局から御説明をお願いいたします。

○予防接種室長 予防接種室長の石川でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、簡単に、きょう祖父江先生にお越しいただいた背景を御説明申し上げます。

 9月17日の合同会議におきまして、先生方から今後、患者の方々に対する救済や生活支援、また、HPVワクチンに関する研究の必要性、医療の質の向上等につきまして御意見をいただきました。その御意見を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、積極的接種勧奨の差し控えは継続するとともに、寄り添う姿勢と科学的知見の尊重という基本方針のもと、今後の対応につきまして、速やかな救済、医療的な支援の充実、生活面での支援の強化、調査研究の推進といったことに順次取り組んできております。

 その中の調査研究の推進につきまして、従来の臨床的観点からの研究に加えまして、疫学的観点からの研究を実施するという点について、このたび祖父江先生にはワクチン接種の有無によらない機能性身体症状の頻度等に関する疫学研究をお願いすることにいたしました。

 本日は、祖父江先生から具体的な研究計画、また、冒頭は疫学研究に関する基本的な解説等も含めまして御説明をいだたくことにしております。どうぞよろしくお願いします。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。

 それでは、祖父江先生、資料10と資料11につきまして、御説明をお願いいたします。

○祖父江参考人 御紹介いただきました、大阪大学の祖父江です。よろしくお願いします。

 では、まず資料10をごらんください。HPVワクチンの有効性及、安全性に関する疫学研究を立ち上げるということで、本年7月から研究班を担当させていただいております。主任研究者は私が拝命しておりまして、分担研究者12名、これが裏面にリストアップされています。垣添先生初め12名の方々ですけれども、中に疫学研究の専門家としては福島先生、原先生、この2名がインフルエンザワクチンの有効性等の研究をされているということで、かなりワクチンに関しても精通されている疫学研究者です。その他、複数の専門家により構成されております。

 7月から計画を検討してまいりましたけれども、主に研究を3本進めていくということで、今、準備あるいは着手しております。

 1つ目が、「疼痛並びに運動障害を中心とした多様な症状」の発現頻度並びに関連因子を明らかにすることを目的とした記述疫学研究。これは、安全性に関する研究でして、後ほど詳細に報告させていただきます。

 2番目に、HPVワクチンの接種後の「疼痛並びに運動障害を中心とした多様な症状」に関する追跡研究。現在、こうした症状で通院されている方をその後フォローするという取り組みです。

 3番目が、子宮頸がん検診受診者におけるHPVワクチンの有効性に関する疫学研究。既に300万人程度の女子学生に対してはHPVワクチンが接種されているという状況で、その方々がことし、来年あたりに二十歳になって子宮頸がんの検診を受けられると。その際の異常所見の出現頻度がワクチン接種でどう変わるかを検討するための疫学研究です。このために対がん協会の御協力を願って、検診受診者の中での接種状況をさらに市町村で接種者リストを確認して比較するという計画を、今、佐賀県と福井県でパイロット的にお願いし、さらに全国的に展開しようということを考えております。

 では、資料11で、安全性に関しての計画を説明させていただきます。

 下の段で、安全性評価に関しての一般的な考え方について、HPVワクチン接種後の状況における課題について、今回計画しているデザインについて説明させていただきます。

 おめくりいただきまして、このあたりは復習ということになりますけれども、医薬品の開発段階において第1相、第2相、第3相ということがありますけれども、これは有効性に関しての検討ということで、安全性に関しては有効性を迅速に判定するために対象者としては比較的少数で、かつ、安全性が確保されるような対象に対して検討しますので有害事象は発生しにくいですし、発生したとしても因果関係の評価はしにくいという状況になります。ですから、一般的には、市販後の医薬品安全性監視の中で安全性を評価することになりますし、その中で出てくる有害事象といいますか、シグナルを検出して、因果関係に関する検討を行うことになります。

 その際に用いる研究デザインとしては、頻度が高ければコホート研究を行いますし、頻度が少なければ症例・対照研究を行う。さらに、ワクチン等ですと、ある一定のエクスポージャー・インターバル・ウィンドーというのを定義できれば、その期間外のところをセルフコントロールとして用いるというような形のものも考えられます。

 この症例・対照研究あるいはコホート研究というのがどんな位置づけにあるかということですけれども、エビデンスレベル、これは疫学研究をやると必ずチャンス、バイアス、コンファウンディングといった攪乱要因がありますけれども、それがよくコントロールできているものはエビデンスレベルが高い、それがよくコントロールできていないものはエビデンスレベルが低いと判断しますけれども、そのレベルでいきますと、上から記述疫学、エコロジカルスタディー(生態学的研究)、横断研究というものがあります。横断研究は比較群あり、個人単位の調査ということですけれども、横断研究の場合は時間的なことが一断面でありますけれども、さらに要因結果に時間軸を持たせるということで分析疫学というものが出てきまして、安全性に関しては介入研究、実験的にリスクを負わせるということはまずできませんので、観察研究にとどまるということでは安全性を確認する分析手法として、一番エビデンスレベルの高いものであることが判断されます。

HPVワクチンの接種と多様な症状の関連ということで、コホート研究あるいは症例・対照研究をデザインしたいというところはそうなのですけれども、通常こういうことを諸外国で行う場合は既存のデータベース、ワクチンを接種した人、しない人のリストがあり、あるいは症状ありなしに関して医療情報のデータベースがあり、こうしたリストに基づいて個人単位でリンケージを行って、網羅的なデータを既存のデータベースから構築できて、それを解析するということであれば、今のチャンス、バイアス、コンファウンディングといったものがきちんとコントロールできた状態での研究ができます。ただ、こうした環境が我が国にはなくて、個人ベースでリンケージできるということではできないと。仮にそういうことができたとしても、例えば、今回の多様な症状を医療情報データベースからICDコードを指標に抽出するということはなかなか難しいということで、仮にデータベースが存在していたとしても今回の状況に対応することはかなり難しいだろうということがあります。ですから、既存のデータというわけではなくて、新たに情報を集めることが必要なわけですけれども、その場合に、どの程度攪乱要因をコントロールできるのかということに焦点が移ります。

 新しく始めるということであれば、症例・対照研究をするとしても、症状がある人の中ではワクチン接種ありという人が症状を訴える割合が高い、あるいはワクチンを打ったと主張する場合が多い、これは客観的なリストがある場合は確認できるかもしれませんけれども、症状ということでいきますと、あると答える人がワクチン接種者の中にふえるということもありますし、コホート研究のような形でいったとしても、ワクチンあり、症状ありというところが、どうしてもオーバーレポートされるということが発生すると思います。

 さらに、今の状況でいきますと、ワクチン接種を新規にされるという方はほとんど確保できないという状況ですので、コホート研究をやろうと思ってもなかなか難しい。ですから、新しい情報を集めるという形で疫学研究を、特に症例対照研究、コホート研究という形でのデザインをすることは、かなり間違った結果を得る可能性が高い、バイアスをコントロールすることがなかなか難しい。ですから、研究班の中では、安易にこうした計画を立てないほうがむしろいいだろうという議論をしました。

 では、何もしないのかということですが、そういうわけにもいかないといいますか、もうちょっと根本的に考えて、今の状態がワクチンを接種する人がほとんどおられないということですので、何もしない状況で今、注目している症状を呈するような人たちがどの程度存在されるのか、ワクチン非接種の状態で同様の症状を呈する人たちがどの程度おられるのかをきちんと確認できているかというと、余りできていないのではないかと思います。こういう方々がほとんどいないと主張される専門家の方もおられますし、あるいは一定程度ずっとおられたのだと言う方もおられますので、この点に関してきちんと客観的なデータを出すことが議論の出発点になり得るのではないかと判断しました。ですから、エビデンスのレベルからいきますと記述疫学に相当するのかもしれませんけれども、ここから出発したいということです。

 レアイベントといいますか、まれな事象ですので、それをどうやって測定するかに関して、従来から難病の全国疫学調査があります。厚労省の研究班が長らくこういうことを継続されています。もともとは自治医大の柳川先生ですか、中村先生やあるいは山縣先生も関与されていると思いますけれども、長らくこうしたもので計測されていると。班員の中の福島先生がこれに関与していまして、今回の計画も彼女を中心に立ててもらっています。

 難病の場合は、疾患の定義がある程度しっかりしています。かつ、大規模な病院を利用する傾向が高いということで、全国の病院をサンプリングする際にも比較的大規模なところを中心にサンプリングするということでOKなわけですけれども、今回は重篤な症状で極めてまれだとはいえ、どのレベルの病院を受診されるかは全く未知数です。ですから、できるだけ広い範囲での抽出率を想定し、200床以上の病院に関しては100%、それ未満に関しては50%というような、割と広めの抽出率を想定しています。一次調査として、患者の有無、概要を数で報告していただき、ありと報告していただいた診療科に対して、個票をお配りして臨床疫学数像の把握に努めるというような計画です。

 一次調査としては、来年1月開始を想定していますけれども、全国の多様な症状を呈する人たちが行きそうな11診療科を選び、さらに既に協力医療機関として実施されているところは含めるということで、抽出率200床以上100%、200床未満50%ということでいきますと、約1万9,000診療科に対しての調査ということになります。この診療科に対して、1月開始ということで過去6カ月、2015年7~12月に調査対象症例基準を満たす患者がいたのかどうかをはがきで回答していただき、ありの場合、性年齢別の患者数を記入していただくということで対応するというものです。

 調査対象症例基準というのが問題になりますけれども、年齢としては12~18歳、以下の症状が少なくとも1つある。疼痛及び感覚の障害、運動障害、自律神経症状、認知機能障害。さらに重篤度を反映させるために、この症状が3カ月以上持続していて、なおかつ、通学・就労に影響があるということを条件としていると。このような基準に合致する方々を数として報告していただき、一次調査でありと回答した診療科に対して、個人票を送付して臨床疫学特有の情報を把握すると。この中にHPVワクチンの接種歴を含めるということで、一次調査に関しては特にHPVワクチンのことは聴取しないということで企画しています。

 この一次調査で、この年齢層におけるこのような症状を持っておられる方々の推計患者数あるいは期間有病率というものが推定できます。

 さらに、二次調査でワクチンの接種歴等を含めて特殊性を把握するということで、ワクチン接種歴なしの中でのこうした症状がある人の全国患者数あるいは有病率を推計するということで、先ほど申しました、打っていない状況における症状の存在頻度を確認することで、安全性議論の基礎データになるのではないかということを企画しました。

 報告は以上です。

○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。

 これから行うスタディーの概略を御説明いただきましたけれども、祖父江先生のお話に対しまして、何か御質問・御意見はございませんでしょうか。

 倉根委員どうぞ。

○倉根委員 何人候補者といいますか、こういう集計のときに何人ぐらい報告が上がってくるかにもよるのかもしれないですけれども、症状自体が余りスペシフィックでない可能性もある。そうすると、どなたかあるいはあるグループの先生方で、その症状をもう一回洗い直すというようなことは行うのでしょうか、行わないのでしょうか。

○祖父江参考人 この一次調査で想定している調査方法は、網羅的にカルテをレビューするという形ではなくて、このような症例の方々がいたかどうか覚えておられますかという形での調査です。ですから、できるだけ幅広くとると同時に、余り年齢範囲が広くなると印象的に残っているところがぼやけるということもあるので、年齢は12~18歳に限り、症状に関してはちょっとぼやけた感じもありますけれども、こういうことで記述をし、さらに重篤であるというところでかなり制限をかけて、そういう症例を覚えておられますかということで医局で聞いていただくというようなことでの調査を想定しています。

○五十嵐安全対策調査会長 桃井委員どうぞ。

○桃井副反応検討部会長 詳細な御説明ありがとうございました。この調査票を送られた現場がどうやってリストアップするかといいますと、例えば、私のところに来たときには小児科では非常に多いものですから、覚えているかというよりも、年齢を限って診断名でのリストアップになると思うんです。そうしますと、保険病名診断が不登校だったり、適応障害だったり、不安障害だったり、自律神経障害だったり、そのドクターのピックアップの仕方によって全然頻度が違ってしまう感じがするのですけれども、その辺はどういうふうに通知をされる御予定でしょうか。

○祖父江参考人 それを余り詳しく限定すると、拾うべきものを拾えないのではないかと思っておりまして、余り限定しない。さらに、幾つかの病院に関してプレテストという形で、これはきちんとできますかということを伺いましたけれども、幾つかの病院は網羅的にレビューを、カルテをくってやるのかというような勘違いをされて、そんなことはなかなかできないという反応もありましたけれども、そうではなくて、記憶をたどるというような形での調査でやってくださいということでのお願いです。

○桃井副反応検討部会長 質問の趣旨は、例えば、私みたいな発達外来をやっている、小児神経外来をやっているところでは、6カ月といいますと記憶にたどれないほど多いわけです。ですから、当然データベースから出してくることになるわけで、そのデータベースからの出し方が、たくさん診ておられる先生によってそれぞれ違ってくるのだろうと思います。そうしますと、全然違う出し方になってしまうことが今ちょっと考えられるかなと思ったものですから。

○祖父江参考人 これは、物すごく多数であるということを余り想定していない調査です。もし、それが本当であれば、今の議論でこうした症状を呈する人は、ほとんどワクチンが投与されてない間では存在しないのだということの反証にはなるかと思います。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 神田参考人どうぞ。

○神田参考人 この調査対象の基準というのは、恐らくワクチンの副反応をぼーっと頭の中に書いた上でのレスポンスだと理解するのですが、例えば、私は神経内科ですが、運動障害のここに当てはまる人というのは、ほとんどの患者がそうなんです。これを全部書くということですか。

○祖父江参考人 ですから、症状として重篤度のところで。

○神田参考人 いえ、要するに、頚椎症も来るし、ジストロフィーも来るし、これを書くのだとすると全部書くことになりますよね。でも、私たちはそういうワクチンに関連したものだとは全然考えていない。でも、これは一次調査、二次調査で網羅的に書くということになるのでしょうか。

○祖父江参考人 一次調査ではできるだけ限定しないということで考えています。除外すべき診断、明らかに診断がついているものについて除外するかという議論は今でも実はしているのですけれども、例えば、外傷でこういう症状があって明らかに原因がわかっているとか、あるいは悪性新生物でそのようになっているというような場合には除外してもいいのではないかということですけれども、明らかな診断がついているということの定義が、また各先生方によって解釈が異なってくるだろうということで、できるだけ広めにとって、二次調査で各症例に関しての診断、暫定的な診断名でもいいと思うのですけれども、それを聞くことで明らかなものを二次調査の段階で除外できないかということを想定しています。

○神田参考人 ただ、二次調査というのは膨大な数の調査票が来るわけで、これを全部書けという話になると大変なことになるかなと私は思いますが、どうでしょうか。

○祖父江参考人 本当にそのような多数の該当する人がおられるということであれば、そのことをもって、こういう方々が一定数以上いるということがある程度言えるような気がしますが。

○神田参考人 私はそういうことを言っているのではなくて、私たちの外来にはほとんどの患者さんが運動障害ということでやってくるわけです。それを全部書くことになると一次調査で何百例と書いて、その何百例全部に二次調査が来て、それを全部否定して、全部紙に書けというのは、かなりむちゃくちゃなことのような気がしますが。

○祖父江参考人 そのように多数の該当者がいるということを言っていただくことが、一つの証拠にはなるかと思いますけれども、その際には二次調査のやり方を考えるということはあり得るかと思います。

○神田参考人 一次調査の段階で、運動障害を全部網羅するとか自律神経障害を網羅するという形でやってしまうと、対象にすべきものがほとんど拾えてこないのではないかと。ですから、これはすごく難しい話になると思いますけれども、今議論している副反応を頭の中に置きながら、これに該当するような患者さんという格好で調査できないかなと思うのですが、いかがでしょうか。これは非常に難しいことになるかと思いますが。

○祖父江参考人 ある程度順番というものに意味がありまして、疼痛・感覚障害、運動障害、自律神経症状、認知機能障害に至るに際して、だんだんと副反応としての特徴が薄れていくといいますか、初期の段階で発生する症状よりは後期に発生するということになっていくのだと思いますけれども、これに関しての具体的なものというのも、一応これ以外に各症状に対してもうちょっと詳細な説明をつけます。やはり3カ月以上持続しているとか、あるいは通学・就労に影響があるというところで数としての区切りがつくのではないかと思います。

○神田参考人 だから、明らかな筋ジストロフィーであるとか、頚椎症であるというものはまず除外していただかないと、この趣旨の調査というのは多分成り立たないのではないかと思いますので、ぜひ、御考慮をお願いします。

○五十嵐安全対策調査会長 山縣委員どうぞ。

○山縣委員 これは本当に大変な調査だと思います。今質問にあったように、この症例の基準というのはとても難しいと思うのですが、私は疫学の視点からすると、今回の場合は一般集団として、今、副反応かもしれないと思われているような症状の人がどのくらいいるのかというベースをきちんと見るということは今本当に必要なことで、ただ、それをどういう形でとるかということに関しての議論だったと思います。

 そのときに、例えば4番目の通学・就労に影響があるという情報というのは、主治医の先生はかなりはっきり把握されているのかどうかというのは、いかがでしょうか。まずは1点目です。

○祖父江参考人 この通学・就労に影響があるということの目安としては、1週間程度休学するとか休職するとか、あるいは通常の運動の活動ができないとか、あるいは保健室に頻回に通いがちになるといったことを想定していますけれども、そのような状況の情報というのは主治医の先生方は多くの場合は持っておられるように思います。

○山縣委員 あと2点あるのですが、1つは、私も全国調査をやったことがありますが、大きな問題が2つあって、1つは、本当に協力体制がどれくらい得られるかということで、今回は1万9,000科の先生方にお願いする場合に、多分こういう研究班でお願いします、厚労省でも重要なのでお願いしますぐらいでは、なかなか返ってこないような気がするので、これまで私たちがやっていたのは人海戦術というか、かなりいろいろなネットワークを使って個別にとにかくお願いしていくようなことをして、やっと出していただけるようなところがあるので、まずそこは実施上の一番のポイントかなという気がします。

 もう一点は実施上の問題で、倫理委員会の問題があって、これは診療録を使うものですので迅速審査でいけるのですが、これに関してはいまだに温度差が大きくて、そうなってくるとむしろ、例えば、先生のところで主任研究として一括して倫理委員会を通して、ほかのところに関しては先生のところに委託するようなお願いをして一括で通してしまうことで、少なくとも倫理委員会が開かれないとか、通っていないから協力できないみたいなところを避けるとか、恐らくこれは実施上で幾つかのハードルがあるような気がしますので、ぜひ、そのあたりは考えていただければいいのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。

○祖父江参考人 倫理審査に関しては、集める側の大阪市立大学のほうで既に倫理審査として承認していただいています。報告していただくほうの病院で倫理審査を通していただく必要があるかというと、倫理指針に照らした上では数を報告していただくということですから、特に倫理審査を通す必要はないと判断しています。

○山縣委員 ありがとうございます。

○五十嵐安全対策調査会長 ありがとうございました。ほかに御意見・御質問いかがでしょうか。

 桃井委員どうぞ。

○桃井副反応検討部会長 小児科領域しかわからないのですけれども、開業医の先生はごらんになって二次病院に紹介されて、いろいろ検査して器質的に問題ありませんとされた場合には、もちろんその二次病院で専門医がフォローする場合もございますが、カウンセラーがフォローしているという症例も非常に多くございますので、その辺もバイアスの1つとして御念頭にお入れいただければありがたいと思います。

○祖父江参考人 診療所等にもアプローチする必要があるということですか。

○桃井副反応検討部会長 そういうことではなくて、医療機関で器質的なものがないと検査をして判断された場合に、医療機関ではなくてカウンセラーだけがフォローしているという場合が結構ございます。特に、不登校でよく見られる症状がたくさん含まれておりますので、そういう経過をたどる小児は極めて多いものですから、必ずしもこういう症状を持ったお子さんが医療機関だけでフォローされているわけではないということも御念頭にお入れいただければ。ぜひ、カウンセラーを調査してほしいというわけではないのですが、そういうバイアスもかかりますよということを御念頭にお入れいただきたいということです。

○五十嵐安全対策調査会長 いろいろと御指摘をいただきましたけれども、ほかはよろしいですか。

 大変な調査ですけれども、その結果につきましては皆さん大変興味を持っていると思います。研究班の結果がまとまりましたら、この検討会でも結果についてお話を伺いたいと考えております。その場合には、事務局で調整していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○祖父江参考人 どうもありがとうございました。

○五十嵐安全対策調査会長 御説明どうもありがとうございました。

 きょうの議題は以上で終了しますけれども、事務局から何かございますか。

○事務局 本日は、長時間にわたりまして活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。

 次回の開催につきましては、日程調整の上、日時について御連絡をさしあげます。

 また、傍聴者の皆様へのお願いでございます。審議会委員が退室されますので、退室が終わりますまで、そのままお待ちください。

 事務局からは以上でございます。

○五十嵐安全対策調査会長 それでは、きょうの会議をこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

(了)

議事録(PDF)

議事録 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成27年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)

資料(PDF)

委員名簿 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料一覧 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料1 乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MR)の副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料2 乾燥弱毒生麻しんワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料3 乾燥弱毒生風しんワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料4 乾燥弱毒生おたふくかぜワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料5 乾燥弱毒生水痘ワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料6 乾燥組織培養不活化A 型肝炎ワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料7 23価肺炎球菌ワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料8 23価肺炎球菌ワクチン定期接種導入後の副反応報告の状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料9 インフルエンザワクチンの副反応報告状況 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料10 HPV ワクチンの有効性及び安全性に関する疫学研究の概要 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
資料11 青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」の受療状況に関する全国疫学調査 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会

遵守事項等資料 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会
遵守事項等資料(申請資料等関与)第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会

開催案内 第16回予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成27年度第6回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会